ディストピア TOKYO

小宮せんせい(まちづくり有識者会議)は犯罪社会学の研究者というより「マップづくり」の事業者である(本人公認)

by on 3月.24, 2009, under タウン情報, 豆知識

『 東京都安全・安心まちづくり条例はイギリスの社会的迷惑行為防止法(Anti-social Behaviour Act 2003)の直輸入版だ。

 この社会的迷惑行為防止法(Anti-social Behaviour Act 2003)とは、極めて軽微な「迷惑行為」を、警察権で規制できるようにするというものである(1998年の「犯罪および秩序違反法」(Crime andDisorder Act 1998)の拡大版)。

 具体的にターゲットになったのは、破壊汚損行為(Vandalism; Grafffitiを含む)、ビラ貼り(Flyposting)、組織的な騒ぎ(Organising illegal raves)、物乞い(Begging)、笛の様な音を吹鳴すること(Whistling)など。

 Anti-social Behaviour Actでは、「迷惑行為」を行い、公衆に不安を覚えさせるような集団を警察が解散させることができるとしている(Part 4)。
 また、Part 7では「公共の秩序と侵害」という抽象的な事柄が問題とされており、これまでRaveの規制対象であった人員を100人以上から20人以上に引き下げるなど、「迷惑行為」の領域が拡張されている。

Anti-social Behaviour Act 2003
http://www.statutelaw.gov.uk/content.aspx?activeTextDocId=820371

Wikipedia: Anti-social Behaviour Act 2003 (Commentary)
http://www.wikicrimeline.co.uk/index.php?title=Anti-social_Behaviour_Act_2003_(Commentary)

 確かに、イングランド・ウェールズでは、1990年代半ば以降、青少年がこのような行為を行い、中流・中高年層が脅威と感じ、問題となった。
 しかし、青少年を法的に規制するだけでは問題解決しないことをイギリス内務省は理解しており、法制定後、統計的に無意味であったり、効果のない法的規制は棄却される傾向にある。

 改悪案策定を行った「東京都安全・安心まちづくり有識者会議」のメンバーである小宮信夫(立正大学)は、このAnti-social Behaviour Actの熱心な伝道者であるが、イギリスの実情を踏まえず、文言のいいところ取りをしているといえる。

 日本では、仮にAnti-social Behaviour Act類似の規制を入れるとしても、どのような規制が犯罪学的に効果があり、また効果がないか、ということがまったく議論されておらず、人々の不安感に乗じて、不必要な規制を加えるという傾向が強い。

 この点が日本の警察・政策決定者(ここでは東京都・東京都議会)、そして小宮ら御用学者の特異なところであるといえる(東京都や都議会は、具体的な問題点にすら無自覚であるともいえるが)。

 「地域安全マップづくり」で一世を風靡し、「犯罪社会学」「犯罪学」などといった肩書を弄する小宮ではあるが、当の日本犯罪社会学会では「(犯罪マップづくりには)理論はありません」などと述べるなど(2005年の日本犯罪社会学会大会シンポジウム)、学問的な裏づけがないことを告白している(であるから、犯罪社会学の研究者というよりも、「マップづくり」の事業者であるといえる)。

 確かに、「地域安全マップ」は、マップ作りに参加する者の満足感は得られるかもしれないが、それが犯罪予防にどの程度役立っているのか、効果が上がっているのかについての科学的な検証は一切なされていない(それゆえ、「安全マップづくり」は学界的には支持を得ていない。これが「地域安全マップ」が公共事業と揶揄される所以である)。

 そのような小宮が紹介する小宮流の「割れ窓理論」や、社会的迷惑行為規制とは、米英の実務や理論の実情を無視した、小宮の願望の反映でしかない。

 こうした「有識者」に煽動される東京都・東京都議会も不幸であるといえるが、東京都民や「来訪者」をより大きな不幸に巻き込まないために、今一度、間違った根拠(あるいは無根拠)に基づいた法令整備が妥当であるのか、将来に禍根を残したりはしないのかについて、真摯に考える必要があるだろう。

【付記】
 石原都知事の肝いりで始められた東京マラソン(3月22日実施)では、「来訪者」を含む多く仮装ランナーが「繁華街等」を「パフォーマンス等」しながら疾走したが、彼らは「大衆に多大な迷惑とな」ったりすることはないのだろうか。
 東京都は、表現の自由に関する自らの解釈、自らの主張のおかしさに気づくべきなのではないか。

http://www.iwate-np.co.jp/newspack/cgi-bin/newspack_s.cgi?s_national_l+CN2009032201000447_1
 』


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