ディストピア TOKYO

東京都ネットカフェ規制 身分証の範囲拡大にごまかされずに廃止を

by on 6月.22, 2010, under New!! ネットカフェ規制

『グローカル』747号(2010/06/01)掲載

東京都ネットカフェ規制
身分証の範囲拡大にごまかされずに廃止を

代々木英三

 三月の都議会で全国初となるネットカフェ規制条例(正式名インターネット端末利用営業の規制に関する条例)が可決、成立した。反対は共産党、生活者ネット、自治市民93(福士敬子都議)。
 この条例で「運転免許証の提示を受ける方法その他の公安委員会規則で定める方法により」客の氏名、住居、生年月日の確認が必要とされた。身分証がないとネットカフェが使えないのはおかしいとの声が出、公安委員会規則でどこまで身分証の範囲になるか注目され、四月三〇日に施行規則が公表された。
身分証として使えるものは表の通り。※
 その他の官公庁から発行された書類も対象と、身分証の範囲の拡大は運動の成果であると言えよう。

なんでいるの? センシティブ情報

 しかし、ネットカフェ規制条例の問題はますますひどくなったと言える。
 今回の施行規則で本人確認記録の記載事項が明らかにされ、「本人確認のために提示を受けた本人確認書類の名称、記号番号その他の当該本人確認書類を特定するに足りる事項」の記録が必要になった。
 このことは、住所・年齢・氏名などの基本情報だけでなく、人種や福祉といったセンシティブ情報まで書き込む必要があるという意味である。
 ネットカフェ利用とその人の人種や福祉がどう関係あるのか。そもそも条例では「本人特定事項、本人確認のためにとった措置その他の公安委員会規則で定める事項に関する記録(以下「本人確認記録」という。)を作成しなければならない」としか書かれておらず、この文章から身分証明証の名称やその記号番号まで記録の対象にすることなぞ想像できない。
 ここまで個人情報の収集範囲が広ければ問題だという声もあがったかもしれないし、都議会でもあれほどスムーズに条例が可決されなかったかもしれない。だまし討ちであり、詐欺ではないか。

どうしてないの個人情報保護!

 しかもこの記録は三年間も保存される。センシティブ情報も含めた個人情報が流失したら取り返しがつかないことになるが、集めた個人情報の保管義務もなければ、保存期間終了後の削除義務もない。個人情報漏洩の罰則もない。こんな状況で利用者が安心してネットカフェを使えるか!
 ネットカフェ利用者なら何をしても平気という治安当局の意図が見える。ネットカフェは使わないから関係ないと無視するのでなくネットカフェ規制条例廃止までがんばろう。

※施行規則による身分証

 印鑑登録証明書、外国人登録原票の写し、外国人登録原票の記載事項証明書、戸籍謄本、戸籍抄本、住民票の写し、住民票の記載事項証明書、国民健康保険証、健康保険、船員保険、後期高齢者医療保険証、介護保険証、日雇手帳、国家公務員共済組合員証、地方公務員共済組合員証、私立学校共済組合加入者証、国民年金手帳、児童手当扶養証書、特別児童扶養手当証書、母子健康手帳、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳、戦傷病者手帳、運転免許証、外国人登録証明証、住基カード、パスポート、学校教育法に規定される学校が発行した学生証、その他の官公庁から発行された書類


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